ゲームが作られるためには適切な人材が必要です。そしてそのゲームがシリーズ作品だとしたならば、ある程度はシリーズ全体を把握している人がやはり必要になるでしょう。「幻想水滸伝」のように、各作品が大きな枠組みの中で成り立っているような作品ならばなおさらです。
では今現在、「幻想水滸伝」の新作が作られるに足る人材というのはコナミにいらっしゃるのでしょうか。ここでは「幻想水滸伝 紡がれし百年の時」と「幻想水滸伝V」のスタッフを中心に現状を把握し、新作の可能性を考察します。
「幻想水滸伝 紡がれし百年の時」
紡時の主なスタッフは、プロデューサーの向峠慎吾さんと、ディレクターの小牟田修さんです。特に小牟田さんは「ティアクライス」であったり「ラプソディア」であったりにも関わっています。
このお二人は現在どうしておられるでしょうか。
向峠慎吾さん
向峠さんはコナミを退職し、トライエースの開発管理部プロデューサーという職についておられます。
http://getnews.jp/archives/1422908
トライエースと向峠さんの関係は、向峠さんが「FRONTIER GATE」や「FRONTIER GATE Boost+」、「ラビリンスの彼方」を担当したときに関わりがあったと思われます。
小牟田修さん
小牟田さんもコナミを退職していると思われます。なぜなら、以下のようにTwitterのプロフィールにて、コナミ作品ではない「Heaven×Inferno」や「エンドライド」を推しているからです。
そしてこれらの作品に積極的に関わっていることを示唆するツイートを行っています。
iOS版の配信がスタートしました!
— 小牟田 修(Osamu Komuta) (@comtang) 2016年3月28日
よろしくお願いいたしますm(。_。)m https://t.co/ilMvDyp1y4
ゲーム「エンドライド」の企画のお手伝いをさせていただきました。応援よろしくお願いします!
— 小牟田 修(Osamu Komuta) (@comtang) 2016年3月26日
https://t.co/kfYxOrt4gk
所属はおそらくフリーで、それは「Heaven×Inferno」と「エンドライド」が全く別の会社のゲームだからです(調べた限り接点がないし、むしろライバル関係でさえある)。いずれにしてもコナミは退職されているでしょう。
インタビュー中の幻水に関する反応
このお二方は、前掲の「FRONTIER GATE」での4Gamerのインタビュー中に、幻水について何度か言及しています。
小牟田 修氏(以下,小牟田氏):
FRONTIER GATEは,弊社とトライエースさんとで共同開発中の完全新作RPGです。KONAMIのRPGというと,まず「幻想水滸伝」シリーズを想起されると思いますが,これも最近はご無沙汰でしたから,今回は久しぶりに本格的なRPGを手がけることになりますね。
向峠氏:
そうですね。KONAMIでは幻想水滸伝シリーズをやっていましたが,もう数年間作っていません。RPGを作ろうと思ったら,スタッフィングをして,さらにノウハウをもう一度積み上げなければいけない状態だったんです。
かといって3~4年もかけてRPGを一から作るのは,こういうスピード感のある時代の中では難しい。であれば,RPGを作ることに長けた企業と組んでやりたいなと思い,そのとき最初に頭に浮かんだのがトライエースさんだったというわけです。
小牟田氏:
幻想水滸伝なんて,まず108人のキャラクターを考えるところから始まりますからね(笑)。
向峠氏:
今だから言えるんですが,最初から6人パーティにしたかったんです。実はこれって,「幻想水滸伝」シリーズと同じパーティ構成なんですね。小牟田がもともと,「幻想水滸伝」シリーズを担当していたということもあって。
上記インタビューを読む限りでは、幻水の開発は「最近はご無沙汰」であり「数年間作ってい」なく、作るためには「3~4年もかけて」作る必要があるということがうかがえます。そして小牟田さんが「もともと」幻水を「担当していた」と、過去形での記述になっています。この点からも、幻水の新作は厳しいことがうかがい知れます。
「幻想水滸伝V」
幻想水滸伝Vの主なスタッフは以下のとおりです。
- プロデューサー:松川智禎さん
- ディレクター:崎山高博さん
- アートディレクター:田中秀樹さん(KING)
- シナリオ:津川一吉さん
- 音楽:三浦憲和さん
当時の記事は例えば「ファミ通の記事」や「GAME Watchの記事」などがあります。
松川智禎さん
松川さんは現在もコナミに在籍している可能性があります。その根拠はFacebookです。もっとも、Facebookを単に更新していないだけで、既にコナミから去っている可能性も否定はできません。
崎山高博さん
崎山さんについては現在コナミに在籍していらっしゃるかどうかは分かりませんでした。ただし、2012年の4月ごろまでは確実に在籍していたことが分かりました。意外なところから分かったのですが、崎山さんが申請人となって特許を申請している文書が存在していたのです。
ちなみにi-revoの「幻想水滸伝かわら版」に崎山さんは何度か寄稿されています。
田中秀樹さん(KING)
田中さんについても現状は分かりませんでした。i-revoにあるKING BLOGも当然ながら2007年6月で更新が止まっています。
津川一吉さん
津川さんはもともと外部の方ですので、コナミうんぬんは関係ありません。Twitterでお姿を拝見することができます。
三浦憲和さん
三浦さんも現在コナミにいらっしゃるかどうか不明です。直近ですと、2009年の7月まで、i-revoで「愛のサウンド劇場」に記事を書いておられましたし、2011年3月発売の「オトメディウス ORIGINAL SOUNDTRACK」に参加していたことも判明しています。
まとめ
幻水の最新のスタッフの方々につきましては上記のような現状です。「幻水V」からは実に10年以上が経過しているため、実質的な幻水の開発体制というのは向峠さんや小牟田さんが担っていたと考えられます。そしてその二人はすでにコナミにはいないのです。
「幻水V」時代のスタッフが僅かながらに残っていたとしても、ブランクが10年以上あり、ただでさえ作るのが難しい「幻水」を果たしてどこまでのクオリティに持っていけるのかは疑問を抱かざるを得ません。
総じて現在のコナミは人材不足と言えるでしょう。したがって、社内で開発するような従来の路線での開発方式では、幻水の新作はまず期待できないと思います。
しかし、私が以前指摘したように、Kickstarterのようなクラウドファンディングを用いたり、制作を外注にしたりすれば人材不足はまかなえるでしょう。ただしその際は、決して「幻水を作ること自体が目的」とならないよう、外部のスタッフの人選をしっかり行い、「幻想水滸伝」の名に恥じない作品を作り上げることが求められると考えています。それこそ、IやIIのスタッフの誘致も考えられるでしょう。
今後の幻水の動向には難題が山積していますが、進展を諦めずに希望し続けていたいところです。
補足
河野純子さんと石川史さんについては(も)、状況が分かりませんでした。