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約束の地

あの日あの時のキャロの想い出

村山吉隆氏へのインタビューの日本語訳

幻想水滸伝 インタビュー

※2014/09/24追記
SRMから正式にインタビューの原文を公開していただきました。

以上、追記です。

Facebookの「幻想水滸伝リバイバルムーブメント(Suikoden Revival Movement、SRM)」による村山吉隆さんへのインタビュー記事を日本語に翻訳しました。

以下、翻訳した日本語文を掲載します。多少の意訳も含まれていますが、文意を損なうものではないはずです。もし誤訳や不足点がありましたらご指摘下さい。検討して修正していきます。なお、極力原文の構成そのままを載せています(余分な個人的注釈などは無し)。このインタビューに関する感想などは別エントリにまとめられたらなと思っています。

インタビューの時期は2014年早期(early 2014)です。

それでは、どうぞ。

村山吉隆氏 インタビュー

村山吉隆(以下、村山(敬称略)):
「幻想水滸伝リバイバルムーブメント」のみなさん、こんにちは。

みなさんからの質問を読んでいて、みなさんの「幻想水滸伝」シリーズに対する情熱や敬意というものを大変強く感じました。お礼を申し上げます。

「幻想水滸伝」というタイトルは、コナミが何かしらの動きを見せなければ前に進むということは現状ではあり得ません。インタビューの回答内でも私はそのように申し上げていますが、ただそのことにより、みなさんの数々の努力や行為が無為になってしまうということは私は全く思っておりません。みなさんにとって良い結果が出ることを信じています。

「幻想水滸伝リバイバルムーブメント」からの質問(以下、質問):
村山さんご自身が一番好きな「幻想水滸伝」のタイトルは何ですか?また、一番お気に入りのキャラクターについても教えて下さい。

村山:
全てのシリーズを通して、私は「幻想水滸伝II」が一番好きです。
キャラクターについては、全キャラクターを通じて、ビクトールが、私の理想のキャラクターとしてとても重要な存在となっています。

質問:
「幻想水滸伝」という作品は、「水滸伝」という作品からは離れ、西洋の物語と東洋の物語を融和させた物語のように思えます。この独特の設定を作るにあたって、主に何が村山さんに影響を与えたのでしょうか?

村山:
私たちは「水滸伝」ではない中国の古典である「The History of the Han Dynasty*1」を参考にしました(元インタビュー訳者注:これは実際の名前ではないようだ。私はこの名称を、書籍をもとにした映画の名称としてWikipediaから引用した。正しい名前は…うーん、少なくとも英訳するにはかなり難しい)。この作品は「幻想水滸伝」に大きな影響を与えました。

私たちは、例えば西洋と東洋の文化の大規模な融合というようなもので世界観を作り出すことは考えていませんでした。「幻想水滸伝」は他のRPGとは異なるオリジナリティの高い作品にしたいと思っていたからです。そこで私たちは、大規模なキャラクターたちのドラマを描くことに狙いを定めました。これが「水滸伝」を題材にした理由ですね。

ただ、東洋の文化をもとにしたRPGは日本国内では大変良い評判を頂くのですが、私たちとしてはそれを是とはしたくありませんでした。したがって、西洋のファンタジー要素をいくつか作品に組み込むことを決めたのです。

そのような姿勢で「幻想水滸伝」を作っていましたので、何かの作品をもとにしたということは本当になく、そう見えるとしたならばそれは偶然の一致です。しかし、27の真の紋章についてと、「混沌 vs 秩序」という対立構造についてはある作品から多大な影響を受けました。「Michael Moorcock」による「The Eternal Champion*2」シリーズがそれですね。

質問:
村山さんは何がきっかけで「真の紋章」いうアイデアを思いついたのでしょうか?27の全ての紋章は最初から全て計画されていたのでしょうか?

村山:
真の紋章のアイデアは日本のとあるカードゲームが由来です。そのゲームではモンスターが登場するのですが、そのモンスターに戦闘中に特別な能力を与えるために「紋章」を付与するのです。モンスターの能力を様々に変化させるために、異なる「紋章」を付与するということですね。それが「真の紋章」の発案のきっかけとなりました。

まず最初に、それぞれの「紋章」ごとに、どのような魔法やどのような特殊な能力(特殊な攻撃方法)をキャラクターに対して与えられるかを考えました。紋章にまつわる物語やその意味付けというものは、後付けでできたものでした。

最初は27の真の紋章はまとまって石の中にあるものとして設定したんですね。けれどもそれだといろいろな問題がうまく解決できませんでした。私たちが考えていたことというのはラフなアイデアではありましたけれども、ストーリーと世界観にとっては必須のことだったのです。ですので、当初の設定では立ち行かなくなったため、私たちはいくつかの設定を大きく見直しました。物事の辻褄が合い、ストーリーがうまく展開できるような設定として作り直したのです。

質問:
「幻想水滸伝」に関するお話の中で、機会があれば特に伝えたいお話というものはありますか?

村山:
私たちは27の真の紋章の継承者がどうなるかという最終的な結末について、基本的な構想は共有できていました。ただ、私自身はその詳細にタッチすることはなかったですね。

質問:
「幻想水滸伝III」と「幻想水滸外伝」のオープニングは、アニメーションという、ゲームや漫画を超えた幻水シリーズの潜在的可能性を示したものとして多くのファンの話題になりました。シリーズのディレクターとして、「幻想水滸伝」をアニメや映画のような他のメディアに展開するお考えはあったのでしょうか?

村山:
私が「幻想水滸伝III」や「幻想水滸外伝」を担当しているときは、ゲームにアニメーションの手法を採り入れることというのは一般的ではありませんでした。加えて、当時のコナミはコンテンツをアニメや映画に展開することについて非常に慎重な姿勢を示していました。

彼らのそのような方針により、ゲームをメディア展開するということについては保守的な姿勢を取ることを余儀なくさせられました。言い換えれば、ゲームはゲームであってそれ以外の何者でもない、という考えが当時はまだあったのでしょう。

質問:
最近の「百万世界」を扱ったスピンオフ作品などの続編に関して、幻想水滸伝シリーズのディレクターだった村山さんとして思うところはありますか?

村山:
「幻想水滸伝」シリーズというのはコナミのものであって私のものでは無いことは言うまでもないことです。だから現在のシリーズの流れについて、私から特に申し上げることはありません。ただひとつ言うならば、今現在の日本のゲーム開発環境というのは良くない状況にあると考えています。例えば「幻想水滸伝」のような、作品ごとに108人ものキャラクターが出てくるようなゲームは、開発するのに膨大なコストがかかります。私は「幻想水滸伝」のようなゲームを制作することは今この現在では非常に難しいことだと思いますね。

質問:
コナミを退社してからの活動について少し教えて頂けますか?

村山:
まず私はタイトーのゲーム「ツキヨニサラバ」でゲームデザインを務めました。その後、アスミック・エースの「転生學園月光録」でシナリオを担当しました。それからは数多くのゲームのシナリオチームに名を連ねました。ただ、種々の事情により、それらのゲームの多くは世に出ないまま終わってしまったんですけどね。今はオリジナルの漫画作品に関わっていたり、ソーシャルゲームの世界観のデザインに関わっていたり、いくつかのゲームのストーリー制作に関わっていたりします。

質問:
最近では村山さんは「マジック・ザ・ギャザリング」の漫画の物語を書かれていましたよね。その経験は村山さんにとってどういう意味がありましたか?そして漫画のストーリーを書くということはゲームのストーリーを書くこととはどう違っていたのでしょう?

村山:
私が「マジック・ザ・ギャザリング」の漫画に参加したのは、コナミ時代からの私の良き編集者の友人の勧めが理由ですね。

さて、漫画でシナリオを書くということとゲームでシナリオを書くということの最も大きな違いは、ゲームの場合はゲームの流れを遮らないように、できるだけ細切れのシーンを繋ぎ合わせてシナリオを作らないといけないのに対し、漫画の場合はそのように細切れでシーンを変えていくことは単に読者を混乱させるだけなので、逆に最小のシーン転換で済まさなければいけないということですね。この漫画の手法は私が手慣れている手法でもあります。これが真っ先に思いつく違いでしょうか。

「マジック・ザ・ギャザリング」の漫画での仕事で、私はゲームでは経験したことのない様々な困難に直面しました。しかしこの仕事のおかげで私は膨大な経験を得られたとも思っています。

質問:
「Bluemoon Studio」を立ちあげられてから、コナミから村山さんに対するオファー(「コナミに戻ってきて欲しい」などの)はあったのですか?

村山:
コナミに正式な社員として戻ってくれ、といった類のオファーは一切ありませんでした。しかしながら、コナミからの様々なオファーは何回かありました。いずれも実現には至りませんでしたが。

質問:
村山さんの今後の展望をお聞かせ下さい。ヨーロッパのファンが楽しみにできるようなことはありますか?

村山:
今の状況で確かなことは言えないのですが、私が現在参加しているゲームのプロジェクトのうちの一つが、主に海外の方を対象にしたものになっています。ただ、まだこのプロジェクトはごく最近に始まったばかりで、いつ公開できるかということは明確には今は申し上げられません。

質問:
RPGというジャンルはPlayStationの創世記からどのように変わってきたと思いますか?

村山:
現代のRPGは開発するために膨大な労力を必要とします。初代PlayStationの時代では、日本の市場は「幻想水滸伝」のような意欲的なタイトルもあり、非常に強力なゲーム市場でした。しかし現在では、多くのメーカーが挑戦的でヒット作となるようなRPGを作ることに対して尻込みをしているように感じます。発売されるのはいつも非常に有名なタイトルブランドの作品で、開発費も十分に回収できることが保証されたような作品ですよね。

質問:
スクウェア・エニックスの北瀬佳範氏が「『ファイナルファンタジーVII』のリメイクは、予算とスタッフとの兼ね合いが難しいものであった」ということを最近おっしゃっていました。この発言に含まれるような、今日のゲーム業界においてHDゲーム制作へのプレッシャーがあることについてはどのようにお考えですか?

村山:
先ほど私が申し上げましたように、平均的な普通のゲームを作るということは今日では極めて難しくなっていると思います。その代わりに、ソーシャルゲームへと徐々に移行していることが業界全体を見渡して言えるかと思います。

しかし、従来のコンソールゲームが作りづらくなっていることの理由として、HDゲームにかかるコストが高騰していることの他に、昔から存在するもっと他の要因があると思っています。エンターテインメントというものは今も、そしていつだって、ギャンブル的な側面を含んでいるのです。一度ある技術の発展を止めてしまったら、後はただただ転げ落ちていくだけです。コンソールゲームが作りづらいというこの現在の状況は、まったくもって良いものではないと考えています。

質問:
最近では、稲船敬二氏や松野泰己氏のように、「Kickstarter」で資金を集めて新しいプロジェクトを始めるというケースが出てきました。このようなプラットフォームに関しての村山さんの考えはいかがですか?村山さん自身のプロジェクトをこのようなクラウドファンディングに委ねるお考えはありますか?

村山:
私は「Kickstarter」の「ファンによる、ファンのための」というスローガンは、先ほどまで私が申し上げてきた懸念を解消する理念としてとても素晴らしいものだと考えています。

質問:
物語の書き手として、今後、人を引きつけて心に残る物語を書こうとしてる後進に向けてのアドバイスはありますか?

村山:
これまでも「シナリオの書き方」を聞かれたときのアドバイスで似たような返答をしたことがありますが、物語を書くということは人間そのものを描くということだと思っています。どのキャラクターも、登場する全てのキャラクターがそれぞれ色々な考えを持ちながらその世界で生きています。それを描いていくことがすなわち物語を書くということなのです。困難に直面した時、人は何を考えるか?どのように行動するか?彼らの立場に立ってあなたが考えたことがまさに物語であり、物語を作っていく上ではそのような過程を繰り返し経る必要があるのです。

「幻想水滸伝」の場合で考えると、リーダーだろうがリーダーと親密な仲間だろうが単なる傭兵であろうが、どんなキャラクターであれ、彼らの考えや思考のプロセスといったものに思いを馳せて、なぜどのように彼らが行動を引き起こすに至ったのかを考える必要があります。その考えが全体としてうまくまとまったとき、それは物語となるのです。

質問:
最後に「幻想水滸伝」のファンに何かお伝えしたいことはありますか?

今まで話してきたように、日本の家庭用ゲームは大変に厳しい現状に直面していると思います。しかしながら、私の経験から言うと、ゲームメーカーはファンの真摯な願いに十分に耳を傾けて来なかったとも思っています。もちろん、ファンの声を聞いたからといって何かしらの成果を上げられることがないということもありますが、私たちはゲームメーカーに対して忘れさせちゃいけないんですよ。真剣に情熱的にゲームを愛している人がいるということ、そう、「幻想水滸伝」を愛している人が大勢いるということを。

「幻想水滸伝」は私ひとりの力で作ったものではないですし、ましてや私個人のものではありません。それでも今もなお、私はみなさんの真摯で変わらぬ「幻想水滸伝」への愛情に触れられてとても幸せです。

本日はありがとうございました。

親愛なる皆様へ。

村山吉隆

(多忙な中、翻訳者の Hsing Chen と Matthew Alberts の熱心な仕事に感謝します)

*1:「項羽と劉邦」

*2:「永遠のチャンピオン」

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