約束の地

あの日あの時のキャロの想い出

ワタミの宅配スタッフのような偽装契約の疑いは他にもある

ワタミの宅配スタッフについて、その契約内容が話題になっている。

ワタミの宅配スタッフが鬼畜過ぎるとネットで話題に|| ^^ |秒刊SUNDAY

http://www.yukawanet.com/archives/4488579.html

確かに内容だけを見るとひどい待遇であり、法令違反を犯しているようにも見える。しかしながら少なくとも表面上は法令違反ではない。なぜなら、「仕事」の項目に記載があるように、これは「業務委託」だからである。

「業務委託」や「請負」といった契約はそもそも「雇用契約」ではないから、契約した人は「労働者」ではない。すると労働基準法をはじめとした各種労働法規は適用されない。「業務委託」や「請負」の契約をした本人は「個人事業主」なのだから。

したがって「報酬」(給料ではない)が100円だろうと200円だろうと構わない。残業代なんか出ない。そもそも残業という概念自体がおかしい。休みなどなくても問題はない。365日24時間働いても問題はない。

もっとも、「個人事業主」である以上多くの裁量が認められている。契約した相手方の指揮命令を受けなかったり、日時や場所を指定されて業務をする必要がなかったり、時間制で「報酬」が決められるということがなかったり、といった具合である(原則的に、という意味であって、個々の詳細は業務内容により異なる)。

これらの個人事業主として認められるべき要素が否定されれば、「労働者」になる。

具体的な基準は以下のページが明るい。

労働者の定義(労働基準法の適用労働者)

http://homepage3.nifty.com/54321/roudousyatowa.html

「労使関係法研究会報告書」について(労働組合法上の労働者性の判断基準)|報道発表資料|厚生労働省

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001juuf.html

前者のページは「労働基準法上の労働者」、後者は「労働組合法上の労働者」を判断する際の基準である。この2つの違いについてはここでは割愛する。

上記ページにある要件を考慮し、「労働者」として認められるならば、直ちに冒頭のワタミのようなビジネスモデルは崩れる。労働基準法最低賃金法に抵触するからだ。

しかし、である。この「労働者性」が認められるためには、裁判によるしかないのである。例えば労働基準監督署や労働局に「労働者性を認めてくれ」と主張しても門前払いされる。「労働者性」にお墨付きを与える機関ではないから、という理由で。せいぜい相談に乗ってくれたとしても、二言目には「裁判」という文字を出されるのである。

つまり、明らかに「労働者性」が認められるのにも関わらず「雇用契約」ではなく「業務委託契約(請負契約)」と偽ることで労働関連法規の適用を逃れ、契約者をいいように扱うというこの偽装契約問題は、現実的には「契約したら負け」なのである。契約したら最後、安い報酬で長時間業務を行わされ奴隷のように扱われるだけなのである。

このような偽装契約を行っている企業は他にもある。「ポールトゥウィン株式会社」という会社を例に挙げる。まずは概略を把握するためにいくつかのページを示す。

【アルバイト】ポールトゥウィン株式会社【デバッカー】 イキシチブログ

http://oasisu4326.blog.fc2.com/blog-entry-899.html

募集情報:チェックスタッフ|企業情報|ポールトゥウィン株式会社

http://www.ptw.co.jp/corporate/checkstaff.html

ポールトゥウィンのアルバイトなら【フロムエー】|バイトやパートの仕事・求人情報満載!

http://www.froma.com/s/p/baito/F12010Bs.jsp?freeword=%83%7C%81%5B%83%8B%83g%83D%83E%83B%83%93

見てもらえれば分かるように、「請負」「業務委託」の契約である(どちらかは媒体によって異なるので断定できない)。フロムエーの方の募集内容を見てもらえれば分かるように、時間と場所がきっちり決められて拘束されている。「シフト」などというおおよそ労務管理がなされている単語が掲載されている。

偽装契約の疑いが極めて強い。

ここの会社は「パズドラ」や「どうぶつの森」のデバッグ(正確に言えば「テスト」)を担当している会社である。ゲーム業界の内側ではこのような「奴隷」たちの業務があって成り立っている部分があるのではないか。

なお、やはりフロムエーの募集内容からも分かるように、この会社は発注元の事業所での作業も行っている。となると「偽装請負」の疑いも強い。「データ装備費」ならぬ「1作業の機材使用料含/300円」を徴収していることからもそれがうかがえる。おそらくポールトゥウィン社はこの「機材使用料」は「請負」で作業をするにあたって本来は自前で全ての機材(例えばゲーム機)を用意するところ、それができなくてこっちで用意してやっている、という理由でこの「機材使用料」を徴収しているのではないだろうか。この料金を徴収していれば「請負」としての建前は立つ。

しかし「機材」がどうして一律300円なのか、現場が異なっても同じ300円なのかに合理的な説明はつかないと考えられるし、そもそも偽装契約ならば前提条件から崩れる(雇用契約ならば使用者が機材を用意しなければならない)。この「機材使用料」は全く不可解な中抜きではないだろうか。

話は戻り発注元の事業所で業務が行われていた場合の「偽装請負」についてだが、これは直ちには成り立たない。なぜならポールトゥウィン社と業務遂行者の契約は「請負契約」「業務委託契約」だからである。また、発注元とポールトゥウィン社との間でどのような契約が交わされているかを知る術もないからである。

偽装請負」の「偽装」とは、「派遣」を偽装しているという意味である。すなわち、実質は派遣の形式なのに、それを請負と言ってしまっていることに問題がある。ところが、派遣というのは、3者の関係である。「派遣元」「派遣社員」「派遣先」である。しかし「請負契約」「業務委託契約」では2者の関係しかない。「派遣社員」が存在しない。「雇用契約」ではないのだから。

ポールトゥウィン社は自身が発注元から受けた請負契約(「業務委託契約」?)を2次請けである請負契約者に丸投げしただけである。発注元としては、ポールトゥウィン社=請負契約者であって、そこには「発注元」「請負契約者」の2者の関係しか存在しない。したがって偽装請負になるはずがない。

偽装請負が成り立つためには、ポールトゥウィン社と請負契約者の間に「雇用関係」があることが必要である。しかしその証明は前述のようにつまるところ裁判によるしかない。だから成立は極めて困難である。いくら疑いが強くてもその疑いが確かであることを確定できないため、偽装契約でもないし、偽装請負でもない。

あなたが士業や超スゴ腕のフリーランサーでない限り、「請負」「業務委託」契約はすべきでないのである。

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