「428 〜封鎖された渋谷で〜」感想・レビュー

以下の内容はWii版に基づいて書かれています。PS3版、PSP版では細部が異なる可能性がありますのでご了承ください

「428」の読み方は「よんにいはち」が正しいようですが、自分は「しぶや」と読んでいます

先日、Wii用ソフト「428 〜封鎖された渋谷で〜」を読了(クリア)しました。このゲームはいわゆるノベルゲームであって、途中に何度か訪れる選択肢の選択によって物語が大きく変わっていきます。

「弟切草」から始まるチュンソフトの一連のノベルゲームを思い浮かべて頂ければだいたい雰囲気は分かると思います。このゲーム自体は「街」のその後のお話ですが、直接「街」とは関係してはいません。ただ、ゲームシステム的には類似したところがあるので、「街」を知っている人だとさらになじみやすいでしょうし、思わずニヤリとしてしまうところもあるでしょう。

ストーリーについては詳細を記すことはしません。この種のゲームではストーリーを記すことはネタバレに直結してしまうためです。今回は文中へのURL記載も極力控えています。それはあらゆる情報を遮断してこのゲームをまっさらな状態から楽しんで欲しいと思うからです。説明書さえも読まなくてもよいかもしれません。

別ゲームの話になってしまいますが、Xbox 360で「シュタインズ・ゲート」という神ゲームがあります(ただし人を選ぶゲームだとは思います)。これもノベルゲームに近いアドベンチャーゲームなのですが、公式サイトに行くとネタバレが満載という非常に危険な作りになっています。さらに、オープニングの主題歌の歌詞がネタバレだらけというこれまた危険な作りになってます。

「シュタインズ・ゲート」ほどではありませんが、「428」でも各種サイトに掲載されている情報がネタバレになっていることがあります。公式サイトも今となって見てみるとややネタバレしているような気もしますし(考え過ぎかも)、Wikipediaなどもそうでしょう。PVもそうです。個人の攻略サイトやWikiに至っては言わずもがなです。Amazonやmk2のレビューもネタバレが含まれているものが見受けられます。

そこまで神経質になることはないのかもしれませんが、やはりこのゲームを存分に楽しんで欲しいので、できるだけネタバレに触れないようにして欲しいと考えています。

そんなわけで、ストーリーを極力除いた感想・レビューを以下に記していきたいと思います。論点があっちこっちに飛びますが、これはプレイしながら感想を部分的にメモしていたためで、多少の読みにくさはご容赦ください。

まず「渋谷」という舞台について。ゲームを楽しむために「渋谷」という街を知っていた方がいいかということですが、渋谷(とその周辺の事情)を知っていると「より楽しめる」程度であり、渋谷に行ったことが無くても問題ありません。移動のときに「あー、これはあの道を通ってあそこに向かっているんだな」というのが分かるぐらいです。

それよりも凄いのは、よくあの渋谷でこんなにも色々なロケができたなということです。ゲームを読み進めていくと分かりますが、本当にいろいろなシチュエーションでの画像・動画が用意されています。これをあの「万年眠らない街」で撮影したというのは大変な苦労があったのではないでしょうか。

ストーリーに少しだけ触れるところを。ゲームのテーマとしては「究極の二者択一」が一つのテーマとして挙げられると思います。いわゆる「トレードオフ」というやつです。ただその選択肢の究極度が高すぎて、どちらを選んでも(選ばなくても)最悪の状態になるという事案です。このような事案に対面するキャラクターのジレンマが深く描かれています。

キャラクター一人一人にガッチリしっかりとしたバックグラウンドがあるので、キャラが浮いたりしないところが良いです。「通行人A」みたいな人にも、文章とその描写で性格付けがなされていて、登場キャラほぼみんなに感情移入できる作りになっています。これはこのゲームの魅力の一つです。しっかりとした設定に基づいてキャラ作りをしていると考えられ、それを行う「文章」という道具もきちんと磨かれて十分な量を用意して世に放たれていると思います。

伏線とその回収についても素晴らしいです。前半はおそらく頭の中が「???」の連続でしょう。しかし話が進むにつれ、ぐちゃぐちゃになっていた糸がしだいにほぐれていき、一本の糸へと収束していきます。ただ、この物語の深さを甘く見てはいけません。最後の最後まで息つかせぬ展開でたたみこんできます。ぜひともこの見事な展開を多くの人に体験して欲しいです。

演出面では音楽の存在も忘れてはいけません。どの音楽も場面に合った音楽で、プレイする自分の息づかいが音楽に合わせて打たれているということがありました。無言の部屋の中で、緊張した音楽とそれにテンポを合わせた吐息だけが聞こえる(あとボタンを押す音)という場面が続出します。終盤になればなるほどその場面は増えていきます。コミカルな音楽から緊張感をあおりまくりの音楽までどれも素晴らしいです。そして主題歌。各所でスパイスのように聞かせてくれます。

画像については「街」などと比べて動画が随所で使われるようになって、これまた物語を立体的にしてくれます。画面にテキストが流れながら背景で動画が動いているというのは、大したことではないかもしれませんが、臨場感を出すための手法としてとても効果的なものになっていると感じます。

そのように音と映像とテキストが一体になってゲーム空間を作り上げているわけですから、自分としてはぜひとも据置機でプレイして欲しいですね。特にHD画質でメチャクチャ綺麗と言われているPS3版で。PS3版はHD映像に加えて5.1chサラウンド、かつトロフィーもついてくるようなのでやはり一番魅力的かと思います。あとシナリオの微追加があります(これはPSP版も)。ただ、この追加シナリオはさして重要ではないオマケ程度とのことなので、これによりWii版を買うのをためらわせるほどではないそうです。

プレイする人の環境によってはPSP版やWii版でも問題はないと思います。PSP版は時間と時間の合間にちょこちょこやる人用(ただ、止めどころが見つからないのが悩みどころ)でWii版はSD画質でもいいので安く抑えたい人用です。

PSP版をプレイする場合はぜひともイヤフォンやヘッドフォンをつけてプレイして欲しいですね。Wii版は、このソフトはWii唯一(当時)のプラチナソフトとして「みんなのおすすめセレクション」扱いで出ていますので、非常に安価で入手可能です(いい時代です)。Wiiにおけるナンバーワンソフトと言っても過言ではありません。

ところで、PS3でHD画質で5.1ch版ができたってことは、撮影機材はもとからハイレベルなものを使われたんですね。

さてまた少しストーリーについて触れます。自分は序盤はいわゆる「BAD END」を丁寧に回収しながら進めていたのですが、途中からすっ飛ばして物語を進めるようになりました。というのも、続きが気になって気になって気になって仕方がないからです。それほどまでに引き込まれるゲームでした。

「BAD END」の回収はゲームクリア後からでもよいと思います。ストーリーを振り返る時間ができますし、回収のついでに実質的にもう一度ゲームをプレイするのと同等になるからです。

ゲームの難易度については標準的だと思います。「ヒント」機能があり、特に序盤はチュートリアル的な役割を担ってくれていてゲームの世界に難なく入っていくことができます。万一「ヒント」がいらない場合は見なければいいわけで、とてもユーザーフレンドリーな作りになっています。単語の意味を解説してくれる「TIP」もプレイヤーにとってはありがたい要素です。主に難語の意味を少しシャレた言い回しで解説してくれます。

ただし、ゲーム終盤はやや難しいです。「かまいたちの夜」的な選択のシビアさが求められます。それでも何度か繰り返していくうちに真相(正解)が分かっていくと思いますので、のんびりプレイするとよいと思います。

PS3版・PSP版の売り上げは決して良い方とは言えないようですが、満足度については各種レビューサイト等を見ればわかるように非常に高いです。せっかく「PlayStation Store」があるのだから最初の部分だけでも全部配信(体験版)すれば間違いなく売り上げは格段に伸びたと思います。事実、「シュタインズ・ゲート」がそうでした。今からでも遅くないので関係者の方は一考してみてはいかがでしょうか。

ゲームのプレイ時間的には、全てのコンプリートまでには約30時間あたりが目安でしょうか。本編クリアのみならば約20時間だと思います。映画を見たり本を読んだりするものと思えば、時間単価はとても安いものです。

追加要素については賛否があり、また難易度的にも議論があります。あくまで「おまけ」的な立場なので、笑ってプレイするぐらいの余裕が必要でしょう。キツイようならば攻略サイトに頼ってもよいと思います。あまり詳しく書きすぎるとネタバレになるのでこの辺で。

長々と記してきましたが、この「428」、間違いなくゲーム史に残る名作です。「シュタインズ・ゲート」が人を強く選ぶゲーム(しかしハマったときの威力は絶大)だったのに対し、この「428」は万人におすすめできるゲームだと思います。「うみねこのなく頃に」、「ひぐらしのなく頃に」、「おおかみかくし」、初期Leaf作品、初期Key作品などが好きな人には絶対的におすすめできます。

このゲームと類似しているNDSの「999」もプレイしたくなってきました。時間があればプレイしてまたレビューをアップしたいと思います。

とにかくこの「428」、一度プレイしてみてください!絶対に損はしないと思います!

以下やや蛇足を。

実はこの「428」をプレイしたきっかけは友達がプレイしていたからです。その感想を読んで自分もプレイしたくなり、積んでいた(←ここ重要)ソフトから引っ張り出してきてプレイしたわけです。そうしたところ、このソフトが大当たりでまさに嬉しい悲鳴。ぜひみんなにも勧めようといことで今回のエントリが生まれました。

今後もゲームのレビューをアップするかもしれませんが、時として「なんでこんな古いものを今さら?」というのも出てくるかもしれません。そういう場合は上記のような理由があることを考慮ください。

さて、次に崩すのは「朧村正」か「アークライズ ファンタジア」か、それとも別の(ハードの)ゲームなのか。いやあ、良作ゲームがまだまだ多くて幸せです。ゲーム業界が衰退しているとかなんとか言われているのかもしれませんが、少なくとも自分は今の状態はもの凄くレベルが高いと思っています。秀作・良作が毎月山積みじゃないですか。自分はそう思います。

以上蛇足でした。

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